2月19日(日)第32回「多読授業とリライト」入門講座報告

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参加者7名。大学、専門学校、その他の機関で日本語を教えている先生5人、小学校の国際学級の先生1人、ボランティアで外国人学習者に日本語支援をしている先生1人の参加でした。 講師は川本かず子です。

まず、自己紹介、この講座に参加された動機と目的について話していただきました。

すでに多読を実践している方、近日中に実践する予定の方、今後実践してみたいという方がいらっしゃいました。多読についてもっと詳しく知りたい、今まで多読を取り入れてきたがそれでよいのかどうか、多読がよいことはわかるが実際にどのように多読授業をすればよいのかわからない、多読授業について具体的な準備や注意点を知りたい、自分の活動の何かヒントになることが得られるのではないか、リライトに興味があるなどでした。

最初に、「なぜ多読がいいのか」「多読のルールとその意味」「支援者の役割」について話しました。
「多読のルール」とは?と聞くと、「やさしいものから読む」以外は出てきました。なぜ「やさしいものから読む」を日本語の場合入れているか説明しましたが、それでも次のような質問が出ました。

*「上級の学生にもやさしいものが必要?」
→基本的には、さらさらと読める快感を身につけるためには、やさしいものから読んだ方がいい。でも、個別対応なので、絶対ということはないと伝えた。

*「絵本、やさしい読みものに抵抗がある大学生には、どうしたらよいか?」
→嫌がる人には無理強いしない。難しいものしか読みたくない学生にはそれを読んでもらい、うまくいかなかったらやさしい本を勧める。やさしい絵本でも一回読み聞かせをすると学生が食いついてくるという報告もある。

次に、動画で「多読授業の始め方」や「多読授業中の様子」「音の効果的な使い方」、「読むから話すへ」を見てもらいました。

午前の部の最後に英語、韓国語、スペイン語の多読体験をしました。絵をよく見ることで、ストーリーの意味がだいたいわかる、ということを実感していただきました。
音はある方が楽しいし、イントネーションで「それはだめ・・」「それはいい・・・」などの気持ちの違いがよくわかります。
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韓国の方がいらしたので、韓国語版「どいてよへびくん」を読み聞かせしていただきました。

絵をよく見て、繰り返しの音で、みなさん、邪魔とか、だめとか言いながら、最後だけ音の違いをキャッチ。楽しんでいらっしゃいました。
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午後の部   リライト体験

○はじめに「ネズミの相談」「キツネとカラス」
三つのグループに分かれてリライト開始。

「ネズミの相談」1組  「キツネとカラス」2組

全体の構成や絵の展開を考えながらページ割をして、テキストをのせていきました。語彙表を片手に全員が積極的に関わり、楽しそうにリライト。
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「ネズミ」グループはレベルを1から0に変更。「キツネ」グループはそれぞれレベル0とレベル1で仕上げました。作品発表。

最後に私たちの作った「田舎のネズミと町のネズミ」「キツネとカラス」を読み聞かせしました。

○次に「蜘蛛の糸」「注文の多い料理店」

グループを変えて、「蜘蛛の糸」「注文の多い料理店」のリライトにトライ。全グループがレベル3にしました。

芥川の世界を壊さないようにしたために作品がやや難しくなってしまったグループ、「会話」を上手に入れてやさしく書き換えられたグループ、シーンごとにイラストを入れて構成を考えたグループ、それぞれ個性豊かな作品ができました。
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最後に「注文の多い料理店」(レベル3/アスク出版)と、「蜘蛛の糸」(レベル3/アスク出版)を見てもらいました。書き換え方や説明の文を足しているところに違いを感じたようでした。 みなさん、思ったより、原作の味が残っていると感じたそうです。

リライトの感想は、

・レベル0は絵の力が大きいことがわかった。
・長いものはあら筋ぐらいでいいのではないか。それに対し、あまり削ぎ落としすぎるとつまらなくなってしまうのではないかという意見も出ました。
・リライトは一人でやったらいやになったと思うが、ワイワイやって作業をするのは楽しかった。

など。

★全体の感想

みなさん、勉強になったとおっしゃって帰って行かれました。

これから多読授業をなさりたいという先生が、「多読の効果」を期待しているとおっしゃっていました。報告を楽しみにしています。

(田中)