2月10日(金)川崎ふれあい館で日本語多読ワークショップ!

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報告がすっかり遅れましたが、2月10日に川崎の社会福祉法人・青丘社の日本語教室(@ふれあい館)にお邪魔しました。
こちらの日本語クラス(識字学級)の生徒さんと共同学習者(日本人ボランティアさん)に集まっていただき、多読体験をしてもらいました。楽しく日本語に触れる多読は、日本語の定着や読み書きに効果あり!ということを実感してもらうのが狙いでした。

午前10時。パラパラと集まってきたのは、学習者約20人、日本人の共同学習者10人余り。
入門、初級、初中級~上級と3テーブルに分かれました。通常は、基本的に日本人ボランティアと学習者が一対一で会話しているそうです。この日も、いつものペアが次々にテーブルにつきました。学習者のみなさんに聞いてみると、日本語の本はあまり読んだことがないそうです。中級以上のある人は、絵本などを読んでいるようですが、ひらがなが続いているとどこで切れるかわからない、と言っていました。

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多読の説明はそこそこに、テーブルに私たちスタッフが一人つき、とにかく多読スタート!
入門者テーブルは、ほとんど字のない絵本、そしてレベル0へ。
初級のテーブルも、レベル0と絵本。
中上級のテーブルでは、レベル2、3の読みものを楽しんでいたようです。

〇入門者テーブル

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人数も多く、全員をサポートしきれなかったのが残念!
ただ、まだ一人でひらがなも読めない学習者が、読み聞かせや字のない本をとても楽しんでくれました。「絵がよくてシンプルなものなら、わからない言葉があってもおもしろいものはわかる」のだなと思いました。
共同学習者(ボランティア)さんの中には、絵本を使って日本語を教えようとする方がいました。また、「字のない本を楽しんでも、日本語がわからないのだから意味がないのでは?」と言われ、うまく説得することができませんでした。「多読」はいままでの教え方と全く違うので、このような反応は当然。そこを上手に説明できるようにならなければと思いました。

〇初級テーブル

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目の前のレベル2ぐらいの絵本をすぐにすぐ手にとって辞書でひとつひとつ調べ始めた方がいました。私が本を変えようとしたら「今読んでいるところです」とかなり抵抗を示しました。それをなだめて、「てのひらおんどけい」という「あったかい」「つめたい」の繰り返しの多い絵本を読み聞かせしました。すると、目が輝いてとても楽しそう。自分でも「あったかい」「つめたい」と声を出し始めました。読後に「おもしろかった?」と聞くと「おもしろかった」と。「多読はその『おもしろい』という気持ちが大切。ことばは全部調べたり覚えたりしなくていい」というととても素直に、「わかりました!」」と。レベル0の「良さんシリーズ」を楽しみ始めました。なんて素直な方! 手応えあり!でした。
今日、始めてこの教室に来たというイギリス人男性は、「やさいのおなか」を共同学習者の方に読み聞かせしてもらい、楽しんでいました。
ほかのみなさんもレベル0、1、「ねずみくんのチョッキ」などを絵を見ながら楽しみました。

〇初中級~上級テーブル

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知らない語彙があるとすぐ意味を調べようとする学習者がいました。特にレベル2「最後の葉」では、つたの意味がわからず、支援者に説明をしてもらってもなかなかわからず、先に進めなかったので、絵を見てもわからない時には、少し先まで読んでみるようにと勧めました。すると、少ししてから「あー、わかりました」。そこまで「待つ」のが支援のコツです。ほかにもこのテーブルはレベルが高いだけに?、文法などにこだわる学習者も見られました。

このグループの中に中国からの帰国者で在日歴30年のSさんがいました。
日本語のレベルは高くて、教材はいつも新聞記事や上級の教科書だそう。そのSさんが、「よむよむ文庫」の神話などを読み、「これは無理なくよく理解できてとてもいい」と言ってくださいました。

Sさんの支援者の方は、難しい新聞記事や生教材を常に準備していたのは間違いだった、これからは多読の本を使いたいとおっしゃっていたのが印象的でした。

全体的に日本人の支援の方が多読について知識があったので、サポートしやすかったです。ただ何人かの中上級学習者とは“多読は絵を見ることからはじめる“”文法は気にしなくていい“などがもっと共有できるとよかったなと思いました。あのままでは、もし本を借りて帰っても、語彙、文法を調べたり、また語彙一語の意味がわからないために面倒くさくなったりして、読まなくなってしまうのではないかとちょっと危惧しています。

最後に今日読んで気に入った本を手に持ってもらいました。

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あっという間のワークショップでしたが、多読の入り口を何とか伝えることができたのではないかと思います。
それをどう持続していくかは、まだ課題がいろいろありそうです。
学習者と支援者が真剣に学んでいる姿から私たちもとても学ぶことの多い今回のワークショップでした。

(田中、宮城、粟野)