2月20日東日本地区YMCA合同講師研修会「多読授業入門」報告!

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2月20日(日)厚木のYMCA健康福祉専門学校で、東日本地区YMCA合同講師研修会が開かれ、多読の話をしてきました。
これは、東京、横浜地区のYMCA4校が合同で年に1度行う日本語教師の研修会です。
事前の教師へのアンケートで「多読について知りたい」という声が複数挙がっていたため、この日のテーマが「多読」になったとのことでした。
4校合わせて60名ぐらいの講師のうち42名の参加があったとか。卒業前の忙しい時期なのに・・・。日本語の先生って本当に勉強熱心だな、と改めて感心しました。

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さて、あらかじめ、「島」に分かれて座ってもらっていたので、話を始める前に、最近読んだ本、今読んでいる本についてみなさんに自由に数分おしゃべりをしてもらいました。
鞄から「細雪」の分厚い文庫本を取り出す人、仕事関係の言語学の本や論文の話をする人、「ぶらタモリ」ファンで、「タモリのTOKYO坂道美学入門」を買っちゃった、という人、女流作家が好きで小川洋子の「猫を抱いて象と泳ぐ」を挙げる人、週刊誌でベッキーと清原の記事を読んだ人(!)と色々でした。「ああ、それ読んだ!」という反応や「へえ、面白そう」という声も次々に挙がり、みなさん、思わず「地」の笑顔に。

そうなんです。「読書」ってとても能動的で個人的に楽しむ行為。多読授業って、それを学生さんたちにもやってもらおうという事なんですーーーというのが今回の話のイントロになりました。
(このアイスブレーキングは、昨年9月に横浜学院にお邪魔したとき、校長先生がさていたのを真似てみたものです)

「多読」ではクラス全員で読むのではなくて、一人一人読むことが基本。
そして、たくさん読む。たくさん読むとたくさんの場面に出会うので、言葉が場面と一緒に自然に吸収できる。そしてそれがやがてアウトプットへとつながるという話に続きました。

次に、多読の方法と教師の役割を説明し、実際の動画も見ていただきました。
最後に英語の絵本、Oxford Reading Treeを使っての多読の入り口体験を少々。
書いてある文字が重要なのでなく、「そこで何が起こっているのか」が重要という話をしました。
字を隠してみると、俄然、絵の世界が迫ってくるようでした。メガネが落ちている、隣のおじさんがヘン、などとみなさん楽しそうに絵を見てくださいました。

昼食後は、小グループでのディスカッションです。多読の話についての感想やどうしたら授業に入れられるかの具体的な話で盛り上がりました。

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あとで、グループ毎の発表を聞くと、
・読みたいものからどんどん読んでいくと、その結果として語彙力や読解力がつくということがわかった。
・読むことが苦手な学生も、多読授業の雰囲気に感化されて読むようになるのではないか。
・多読をする前のオリエンテーションが大事だと思った。
・本の種類を増やす必要がある。たまには学生をブックオフや図書館に連れて行くのもいいのでは?
・読みたい本を自分で選ぶというのが大切。
・実際に授業をやっているが、学生はみな楽しんで読んでいる。
・個人面談するより学生のことを知ることができる。
・字が苦手な学生は耳から取り入れればいいのだとわかった。
・絵から視覚的に情報を取り入れることも大切だとわかった。
・多読は、日本語を自分で使う楽しみ。
・生教材(市販本)の情報交換ができる掲示板のようなものがあったらいい。
・手始めに朝読書のように毎日10分ぐらい読む時間を設けてもいいかもしれない。
・多読のゴールってなんなんだろう。
・多読での伸びは教師が見てわかるのか。
・クラスでやる意味は?
・金曜日の最後の授業としてやるのが一番いいのでは?
などなど色々な感想や意見が出ました。

みなさんから出た質問に答えていく過程で、すでに多読授業を4年ぐらいやっているという横浜YMCA学院の先生が「新しい学習スタイルを取り入れるとき、何でもプラスマイナス両方あるものだが、多読に限って言えばこれだけプラスが大きい授業はないと思う」ときっぱり言い切って下さったのは、本当に心強かったし、うれしかったです。
こうして、すでに先を歩いている仲間の学校があるのですから、授業見学、相談会など開きながら、ほかの学校も徐々に実践を始めてくれるといいなと思いました。
私たちも、こうした「やりたいけれど、躊躇している」先生方のために、広く「多読授業相談会」の実施をしていく必要があると改めて感じました。

その後、東京YMCAにほんご学院の会話授業の試みの発表がありました。
小グループで自由に学生たちに話させる活動は、私たちNPOでの多読ならぬ「多話」の考え方と同じでとても共感できました。初級後半から上級までのクラスを全部シャッフルしての会話プロジェクト、というのがとてもすばらしいアイデアだと思います。教師は、見守る、教えない、テストしない・・・。
それにしても「show&tell」のネタの写真はいまやみなさんスマホで見せ合う時代なんですね。留学生がだれでもみんな持っているスマホ・・・すごい市場だ!とヘンなところにも感心してしまいました。

その後、さらに専任の先生方とお話しする機会ももて、有意義な一日になりました。

帰りがけに、ある先生が「授業はやったことなくても多読について知らない先生はいないんじゃないでしょうか」とおっしゃっていたので、大変感慨深いものがありました。10年前には全然知られていなかったのに、いまや関心の的に?!
そこで、早速、地元の書店で日本語教育関係の棚にあった「読解授業」の本を覗いてみたら、ありました!「多読」という項目が。そして、我らが提唱する多読の4つのルールがしっかり引用されていました。世の中、少しずつ変わってきたようです。この先の広がりが楽しみです!
(粟野)