10月3、4日 USC多読ワークショップの報告!

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10月3日と4日にアメリカの南カリフォルニア大学で多読ワークショップがあり、酒井理事長と粟野が参加してきました。

計画してくださったのは、南カリフォルニア大学の熊谷由香先生。いま、アメリカ多読の中心的存在で、大学中心に多読普及活動を熱心にされています。
2か月前から申込が続々とあり、結局、スタッフを含めて60名以上の参加となりました。

さて、はじまりはじまり・・・。

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3日(土)
事前アンケートでは、3分の2ぐらいが、多読を全く知らない先生でしたので、最初の酒井理事長の話は、多読がどうして必要なのか、今までの言語(英語)教育の問題はなにかというところに絞っての基本的な話になりました。自称マウスアート(針金では?!)の「樽のたとえ」や検定教科書の不自然さ、量の少なさなどわかりやすい例を題材にした話は、ただでさえノリのいい日本語の先生たちに大受けでした。

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日本語多読の実際は、なるべく多読授業の現場や学習者の声が伝わるよう動画を見てもらいました。駆け足になりましたが、実際に授業の様子や多読の目指しているところがわかっていただけたらいいなと思っています。
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(午前の部、めでたく終了!)

昼休みには図書館見学。絵本、そして私たちが作り続けてきた多読用読みものが並んでいました。2年前までのホチキス止めの「JGR多読文庫」も健在でした。
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(とても見やすくきちんと色分けされています)

午後は、4人の先生が多読実践について20分間で報告するラウンドテーブル。
アメリカ国内で開かれている課外の多読クラブ、正規の多読コース、図書館司書の立場から見た多読など、さらに具体的な実践を聞くことができました。はじめて多読を知った先生方も、これで多読がぐんと身近なものになっていったのでは・・・と期待しています。
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(図書館との協働による正規多読授業/ノートルダム大学の纐纈憲子さん)

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(図書館の協力をなかなか得られない中、始めた多読授業について/ペンシルバニア州立大学のOsada Natsukoさん)

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(少ない予算で多読クラブについて/カリフォルニア大学サンタバーバラ校の菅原浩子さん)

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(図書館と多読コレクション/カリフォルニア大学ロスアンゼルス校のバイアロック知子さん)

そして極めつけは、あのナチュラル・アプローチで有名なスティーブン・クラッシェン先生の講演でした。酒井理事長の英語での紹介を受けて、ご登壇。聴衆をすっかりリラックスさせる「まくら」はさすが。
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言葉は、語彙や文法を学習するスキル・ビルディングではなく、楽しみながら読むことで習得ができるというご自分の理論をいくつかのデータ結果を示しながらお話しされました。午前中の酒井理事長の話とも重なる部分が多々あり、聞いているみなさんも深くうなずいていらっしゃいました。

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4日(土)
この日の参加者は30名ほど。まず、前日できなかった入門者のための多読導入例として、Oxford Reading Tree の字なし絵本、「どいてよ へびくん」韓国語バージョン、レベル別日本語多読ライブラリーのレベル0を学習者になった気持ちで眺めてもらいました。

さて、次にいよいよ多読用読みものを作るワークショップ。
9つのグループに分かれて、「アリとキリギリス」「北風と太陽」「ウサギとカメ」「羅生門」のリライトがスタートしました。持ち時間1時間で、リライトと絵を考え、冊子にまとめます。「羅生門」以外は、レベル0、または1に。

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みなさん、すごい熱気で、大盛り上がり。絵の情報が大切ということがしっかり伝わっていたため、絵にも工夫がみられ、言葉もとてもシンプルに抑えられていて力作が生まれました。
「羅生門」は文学作品のリライトに興味のある先生方が集まり、語彙表とにらめっこですすめていました。

最後のフィードバックの時間には、同じものをリライトしたグループ同士での発表、意見交換、そして、さらに全体でそれをシェア、多読ブックスの例も発表してくらべてみました。
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どのグループもきちんとツボをおさえたリライト作品になっていたと思います。
この経験から、どんどん新しい多読読みものが生まれてきたらうれしいのですが。

最後は、絵本のレベル分けワークショップです。
正直、ここまで「全部入り」のワークショップははじめて。でも、みなさんのパワーは衰えるところを知らず、用意された児童書、絵本をみんなで回し読みして、話し合いがすぐ始まりました。
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「これは入門者に使えそう」「読まなくても絵でわかる!」「ひらがなが多くてきつい!」
なかなか素敵な絵本も見つかり、私も勉強になりました。
繰り返しの多い、絵だけで話が追える本がなかなかないこと、内容がよくてもひらがなばかりで学習者には読みにくそうな本、日本の子ども向けの本と日本語学習者向けの本の違いなどを感じてもらえたでしょうか。本選び、レベル分けはそう簡単な話ではありません。その後の質疑応答でも、図書館でどうレベル分けして並べるかということが熱心に話し合われました。
多読用読みものをどう増やしていったらよいのかについてもいろいろアイデアが出てきて、なかなか話はつきませんでした。

終了したのは1時45分頃。
昼食もそこそこにここまで熱心に参加してもらえたこと、全体のオーガナイズのすばらしさ、どれも感動ものでした。そして、土曜日の様子は撮影もされ、どこからでもアクセスできたとのこと。深夜にもかかわらず、日本でもライブで見てくれた方がたくさんいたようです。ありがとうございました。
これからのアメリカでの日本語多読の広がりに大いに期待しています!

しばらく映像はアップされているようです。ご興味のある方はこちらをどうぞ。

午前9時半~12時 多読とは/日本語多読授業
http://capture.usc.edu/Mediasite/Play/08d05d7bfe8a477b938a503dcd842f311d

午後1時20分~2時55分 ラウンドテーブル
https://capture.usc.edu/Mediasite/Play/f90fa5643fba421ab92bc0a0885a59ee1d

午後3時~4時45分 クラッセン先生の講演
http://capture.usc.edu/Mediasite/Play/3ec6171dda5f4e2fa7854a3909b878481d

(粟野)