9月27日(日)第23回「多読授業とリライト入門講座」報告!

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第22回までは講座名は「多読のためのリライト講座」でしたが、この第23回からは「多読授業とリライト入門講座」という講座名になりました。より内容を表すものになったと思います。

今回の参加者は、日本の大学の先生、カナダの大学の先生、日本語学校の先生、アメリカの公立校小学生から高校生までの生徒さんに日本語を教えた経験のある方、ご自身もお子さんも英語多読を実行中の方、という5人でした。

現役の先生は、授業に多読を取り入れる方法を探っていらっしゃいます。ほかの方は、多読を通じて社会に何かを発信できないかと模索中です。多読授業とリライト入門、そのどちらにも関心のある方々でした。

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まずは、多くの日本語学校や大学で行われている「いわゆる読解授業」のむなしさ、のお話から始めたところ、みなさんが、それぞれの体験を話してくださいました。

大学でも、日本語学校でも、「読解」の授業を続けても、学習者になかなかまとまった物が読める力がつかないこと。問題集的な物を懸命にこなしても、本来的な読む力はついていないように思えること、などです。
その話を受けて、英語多読体験者の方から「多読」は読む力が付くこと、それにはORTやグレード分けされた物を読んでいくのがよいと、早くも英語の多読の話が出ました。

英語多読の話が出たところで、ORTや、英語多読をスタートするときに適していると思われる絵本、そして韓国語の絵本も見ていただきました。
初めに文のないORT、短い文のあるもの。ほとんど文のない英語の絵本。韓国語の絵本。次々に見ていく中で、絵だけでも、ストーリーが追えること。わからない単語があっても推量できること。などの発見があったようです。

「日本の中学校や高校の英語の教科書には、出てこない単語がありますね」「わたしも、crossの、このような使い方は知りませんでしたが、絵見てわかりました」「trainersって、スポーツウェアじゃないんですね」
などと、受講生同士の打ち解けた会話が始まりました。そして、日本語多読を始めるときに学習者に人気の日本語の絵本と、私たちの作った「よむよむ文庫」と「多読ブックス」。それらの本を見ながら、「レベル0と1の中でもレベル差がありますね」 「英語のORTに比べると、レベル0でもかなりの量の文が入っていますね」などの声が聞かれました。

多読用の本を見ていただいてから、多読授業の様子を動画で見ていただきました。
多読授業開始時に授業の目的を話すことが大切であること。ルールの説明もはっきりすること。声かけのタイミングなど、画面に状況が映るごとに、受講生の方々の現場の状況や意見が出て、講師が一時停止ボタンを押しては、話し合い、学び合うという活気のある「多読授業入門」になりました。

昼食休憩後、リライト体験になりました。

語彙表と文型表そして「リライトのポイント」というプリントをお配りして説明したあと、すぐに、イソップの「うさぎとかめ」を、レベル1で作っていただきました。2班に分かれてストーリーを思い出しながらの作業です。

午前中、多読用の本を数多く見ていただいたためか、
「そこは絵でわかるから、どんどん言葉を入れていいんじゃない?」「ここは、見開きにしてど~んとクライマックス感を出しましょう」
などと、講師が口を挟む必要などないなあ・・・と思うほどの活気。

「あの~、そのまま印刷して出版するのではないので、挿絵や構成などは、もう少し適当でも・・・」
などと、講師は、ちょっと失礼な止め方をしてしまいました。1冊は、ですます体のルールを守って作ったもの。1冊は、どんどん普通体が出てくるけれど、声に出して読むとリズムのよいもの。2冊の楽しい本ができました。

次は芥川「羅生門」を、レベル4でリライトしていただきました。
「2班でリライトしていただきます」と言ったところ、
「5人、みんなで話し合いながらリライトしたい」と声が上がりました。「少人数だと、行き詰まったときにいいアィデアが出ないもの」
―――おお、本当に、リライトってそういうものなんですよねえ―――
講師は心の中でつぶやきます。

「一語一語を言い換えるのではなくて、原作者が言いたいことを学習者にわかるように書き直すのよね」
などと、受講生同士の会話。
―――あら、それじゃあ、私が言うことがなくなってしまうじゃあないですか。その通りです―――
講師はにこにこするばかりです。

とはいうものの、皆さん、かなり苦心して原作の5分の1くらいまでのリライトをしてくださいました。
「耳で聞いて不自然な日本語になっていないかを、チェックしましょう」と、声をかけます。代表で、一人の方が読み上げてくださいました。

「おお!いいじゃないですか!」「うん。かなりいいですねえ」拍手!!!
みなさん口々に自画自賛です。今回の受講生の方々はみなさん、積極的で楽しい方ばかりです。
それに、本当に全体のトーンの整ったよいリライトができていました。

最後に感想を伺ったところ、自分で多読用の読みものを作って授業に使えるかもしれないと思った、とおっしゃった方がいらっしゃいました。
作品ができたら見せてくださいね、とお約束して今日の講座を終わりました。

次回の第24回「多読授業とリライト入門講座」は、11月29日(日)午前10時半からです。
日本語多読授業や、日本語読みもののリライトに関心のある方々の参加をお待ちしています。
(松田 記)