7月18日(土)仙台での研修会「多読がもたらす日本語学習の広がり」報告!

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報告が後先になりましたが、7月18日(土)にNPO法人国際都市仙台を支える市民の会(ICAS)のお招きを受け、公開研修「多読がもたらす日本語学習の広がり」の講師を務めました。

ICAS(通称:アイカス)では、ありがたいことに「日本語教師のための多読授業入門」(アスク出版)を読んで共感してくださった先生が、すでに多読のクラスを始めていて、この研修の実現にも一役買って下さいました。さらにすばらしいのは、仙台シリーズでおなじみの多読授業実践校、仙台国際日本語学校の先生方がすでに多読セミナーも開いて絵本の選定などを行ってきたこと。すでに東北で多読の輪が広がりつつあるんです!
さて、当日は43名の参加者があり、ほとんどがボランティア教室の先生たちでした。

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まず、私たちが多読や多読の本作りを始めたきっかけ、そして実際に多読をする学生に教えられたことを中心に話を進めました。
語彙や文法を学んでから、文章にあてはめて解読する従来の「読解」に対して、読みたいものを読んでいく術を身につけていく「多読」で、読むことに目覚める学習者がいかに多いか、私たちが経験してきた実例を元にお話ししました。
そして、それを実現する「多読のルール」と教師の役割。
多読をしている様子や学習者の多読体験談は、実際の映像を見ていただきました。

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休憩をはさんで、後半は、学習者の立場に立った多読体験。
韓国語の絵本を見て、どんな話なのか想像してもらいました。それから音、そして文字へ。
音が何度も同じ繰り返しだとわかると、ページを繰る度、同じフレーズを叫んでくださいました。
それは、「やさいのおなか」を見た学習者が「これなあに?」とページを繰る度、合唱してくれるのとまったく同じ!三つの単語だけで出来た絵本。声を出して言っているうち、最後には覚えてしまう、これが多読の楽しいところですね。
次に、英語の本。絵を見るとストーリーもオチもよくわかります。それから、絵を見ながら音を聞いてもらいました。そして最後に文字も見てもらいました。
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絵と音を手がかりに、読むことに親しんでいくうちに、読みたい本が読めるようになる、そのお手伝いをするのが私たち教師、あるいは支援者の役割だと言いたかったのですが、うまく受け止めていただけたでしょうか。

いくつか質問もでましたが、印象的だったのはこんな究極の質問です。
「多読的なアプローチと従来の文法、語彙積み上げ式のカリキュラム。実際に授業に取り入れていくとしたら、この割合はどのくらいが理想でしょうか」
多読は楽しいし、長い目で見た効果もあるのがわかっても、実際に今のカリキュラムに入れるのが難しいというのが現場の先生方の悩みです。もし、私がカリキュラムを作っていいと言われたら、どんなカリキュラムを作るでしょうか・・・。
日本語学校の場合は「8割~9割が多読的なアプローチ、残りが従来の知識重視型の授業というのが理想です」がその時の答えです。多読を実現するリソースの充実がまだまだな現実ではかなり不可能でしょうけど、多読、多聴、多話、多書を基本に据えて、とにかく日本語を使う環境と経験豊富な指導者がいたら楽しい学校ができそうです。在住外国人対象のボランティア教室の場合は、毎日が「多読多聴多話多書」の環境にいる「はず」の学習者の日本語環境をまず把握することが指導のポイントではないでしょうか。
カリキュラムを大きく変えることは難しくても、テストの点数のような短期間での成果を求めるのではなくて、ひとりひとりを長い目で見て導いていく「多読的」指導がもっと重視されるようになるとよいのになあと思います。

熱心に聞いてくださった参加者のみなさん、何回もやりとりをしながら準備をすすめてくださったスタッフのみなさん、ありがとうございました。
参加者のみなさんの反応は、次のブログにて報告いたします。
(粟野)