7月26日第22回「多読のためのリライト講座」報告!

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2010年秋から始まったこの「多読のためのリライト講座」も20回を超えました。
これまで120人以上の方が受講してくださったことになります。その中から、私たちの読みもの作成会に加わった方、多読授業を始めた方、多読用読みものを作った方、英語多読を始めた方など多読とのかかわりを続けている方が多くいらっしゃいます。さて、今回はどんな出会いがあるでしょうか。
7月26日(日)、猛暑日の中、集まってくださった方は9人。海外の大学の先生、日本国内の大学の先生、インターナショナルスクールの先生、日本語教育専攻の学院生、その他大学の英語の先生や一般の方までと多様な顔ぶれでした。

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最初に自己紹介と講座に参加した理由を語っていただきました。
今回は、すでに多読をやっているというより、これからやってみよう、または多読ってどんなものなのかに興味のある方が多く、また「リライト」に興味のある方が多かったようです。

〇多読について
多読を始めるきっかけや授業をやっていくうちに学習者に気がつかされたことを中心にお話ししました。
・「語彙と文法」で読めるのではない。
・興味があるものは多少難しくても読めるが、興味がなくては読めない。
・クラス全体で読むのでは、「量」が確保できない。などなど・・・。

〇多読のルール
多読の読み方、「多読のルール」の意味を説明しました。
「すべり読み」についてどう思うかという質問が出ました。かなり、多読に詳しい方なのでしょう。「すべり読み」というのは、本人は楽しく読めているつもりでも、内容がちゃんとつかめていないことがあるため、英語多読教育の中から出てきた言葉です。
「わたしたちは、『すべり読み』でもいいと思っています。たとえ30パーセントの理解でもおもしろいと思ってよんでいればOK。そしたら次につながる。続けていくうちに理解度は上がってきます」とお答えしました。あくまでも読む側の気持ちに寄り添うのが多読。「すべり読み」防止を唱えた先生方が「7~9割の理解度で読む」というルールを考えたそうですが、こんな数字を出したら、読解テストをして確かめることになって多読と逆行するのではないでしょうか。こう言うと、何人かが「うんうん」とうなずいてくださったのが心強かったです。

〇多読での学習者の様子
泣きながら本を読む学習者の映像と多読の効果について二人の学習者の例を動画でお見せしました。
おもしろかった本の話を思わず再現するAさんと漢字がわかってきて買い物も楽になったとうれしそうに語るBさん。多読の目指すところがお伝えできたでしょうか。

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〇「絵を読む」から始める多読体験
これまでの講座ではあまり言わなかった「絵を読む」多読の話を少し。
活字を語彙と文法の知識で暗号解読するのではなくて、活字の裏に広がる「絵=状況」に注目する読み方をしましょう、ということで、韓国語の絵本と英語の絵本をを見てもらいました。最初は絵だけ。それから音を聞いてもらいました。同じ言葉を繰り返しているから、きっと「〇〇」は「××」のことだ!とわかってきます。
その後、韓国語の本を二人で一冊見てもらい、お話しを考えてもらいました。まったくわからない韓国語の本ですが、だんだん「読めて」きてしまうのが楽しいです。

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〇昼食をはさんで、午後は3人ずつ3つの班に分かれ、いよいよ「リライト」です。
最初は、イソップの「アリとキリギリス」「北風と太陽」「ネズミの会議」をレベル0にしてもらいました。
かなりうんうん、考えていらっしゃいましたが、1時間後、やっと絵入りの本が完成しました。
場面=絵が浮かぶと、物語が動き始めて、セリフもつけやすくなります。「ネズミの会議」は、会議にいたる理由の部分を場面化するのが難しかったようです。

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休憩をはさんで、次は「蜘蛛の糸」。レベル2にする班と3にする班が出てきました。
第1章のちょっと手前までで時間終了!極楽と地獄をどうわからせるか、小説全体の雰囲気を損なわないようにするには、とみなさん気をつかったリライトになりました。

最後にみなさんに感想を聞きました。
・多読授業をやるにあたって、この読みものがどんな風に作られているか知ることができたのは、有意義だった。
・小説の雰囲気を残しながら、どこまで簡約するか、その兼ね合いが難しい。
・多読を授業以外にどうやって取り入れていけるか考えたい。
・「絵を読む」「音から入る」という発想は新鮮だった。そこから「話す」「書く」へとつながる可能性を感じた。
・日本語多読は、英語多読とまたちょっと違う。文字体系の複雑な日本語の教育にとって大きな意味があると思った。

今日の話とワークショップが、これまでの授業を考え直すヒントになってくれればいいなと思います。
次回の日程は未定ですが、決まり次第、サイトのトップページでお知らせします。
ぜひ、ご参加下さい。
(粟野)