日本語の多読授業があちこちで始まった・・・

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昨年あたりから、海外や日本国内の語学学校や大学、高校で日本語多読授業が始まったというニュースが届くようになってきました。今日は、都内某私立大学のS先生による選択科目、多読クラス第1回目の報告をおとどけします。

昨日、学部生の読解の授業で、多読を実施しました。
用意した本は、アスク版の多読ライブラリーです。
学生は中国人、ベトナム人の1年生と3年生の11人でした。みな日本語力は能力試験2級程度です。
最初は「ちゃんと読んでくれるかな」「おしゃべりを始めちゃうんじゃないかな」と、とても心配したのですが、みなさんにいただいたアドバイスをもとに授業の目的や方法を説明し、本を並べて授業を始めると、みんな一言もしゃべらずに夢中で本を読み始め、いつもおしゃべりがうるさくて黙らせるのに苦労している学生まで、黙々と本を読みふけっていました。
レベル1~2ぐらいから読み始めた学生がほとんどでしたが、レベルのことを気にせず興味のあるものを選んだのかいきなりレベル4から始めた学生もいました。この学生はそのコマのうちに一冊読み終わることはできませんでしたが、付箋をあげると、読んだところまでに付箋をつけ、そこまでの話をみんなの前で楽しそうに話していました。
読書時間終了後に読んだ本について話させたのですが、この時も、普段口が重くてうまく話せない学生が、熱心に読んだ本について語っていました。多分、大成功なんだと思います。
ちょっとおおげさですが、長年の読解授業のモヤモヤがすっきり解消したような気分です。
みなさまのご助力のおかげです。これから前期15回、多読を続けようと思います。

それから、この日、もう一つ面白いエピソードがあります。
この大学は留学生の数があまり多くありません。そのため、日本語のクラスに来ないと留学生の友達に会えないため、私の授業には、もう日本語の単位を取り終えた学生も、寂しさをまぎらすためか、時々教室に遊びに来ます。(そのときは、「おしゃべりをしたら追い出すけど、黙って見てるのはいいですよ」と、釘をさしてから座らせておきます。)この日も上級生が一人来ていたのですが、みんなが熱心に本を読んでいるのを見て、自分も読ませてくれといっしょに読み始めました。そして、その授業時間が終わって、同じ教室で次の時間の私の文法の授業が始まっても「次は授業がないので残って読んでいたい」と言って、下級生たちが文法の練習問題をやっている間、ずーっと教室の隅に座り込んで、黙々と本を読み続けていました。
そして、その日の私の授業が終わるころ、「あー、おもしろかった」と言ってお礼を言って帰って行きました。
「暇だったらまたおいで」と声をかけると、「時間があったら来ます」と言っていました。
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多読授業特有の、教室が水を打ったようにシーンとして、夢中になって読む学生の姿が目に浮かびます。
普段口の重い学生が一生懸命話したり、上級生がずっと教室の片隅で本を読みふける・・・いいなあ。この授業が、学生さんたちの心の何かに触れたに違いありません。
「こんな本、やさしすぎると言って、馬鹿にして読まないのではないか」と最初はS先生、ずいぶん心配されていましたが、うまくいったようで私たちも一安心。
あと14回、ぜひ、楽しい読書経験をしてもらいたいと思います。
(粟野)