8月3日第3回多読支援セミナー 分科会(英語)報告

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日本語に続けて8月3日第3回多読支援セミナー英語分科会の報告です。

まずは当NPO英語多読講座支援者の繁村と山谷講師が自身の講座を振り返り、支援について話をしました。

多読は英語に「慣れる」ということ。最初分からない単語を気にしている人が、多読が進むうち、単語に関する質問がなくなり、単語が自然にわかる体験をしている。ブックトークであらすじだけを言っておしまいだった人も熱く語るようになり、本に対する入り込み方が深くなっていく。多読で講座生は確かに進歩しているが、それに講座生自身が気づかないことが多くあるため、気づいてもらうよう支援することが大事だと思っている。

最初はそれぞれに読書、シャドーイング、聞き読みをしてもらう。その間に講座生を回って、何を読んだか、どう感じたかなど話をする。次にブックトークや絵本の読み聞かせをしている。「絵本がきらい」と言っていた講座生が、「絵本大好きになったの!」と言って、講座終了後も残ってブックトークするまでになった。講座生が自分にあった本選びをできるようになってきている。講座生にいかに楽しんでもらえるかが重要。課題としては、多読による変化の実感がなく、自分をテストしてみたくなる講座生や、英語の音の変化がいつ頃現れるのか心配している講座生への、日々の進歩への実感を伝えることが大事であり、課題だと思っている。

どちらも異口同音に、多読支援には、多読を楽しめるようにすること、そして、多読で実感しにくい自身の進歩へを気づかせながら後押しすることが大切だと強調していました。この後、質疑応答を行いました。抜粋してご紹介します。

Q:学校全体で多読授業を始める場合、生徒のモチベーションをどのようにして高めていけばいいか?
→ 自分の場合映画が好きだったので、映画を楽しむのには英語が分かった方がいいだろうと思った。生徒本人が気づいていない「英語ができた方がいいだろうな」というタネをみつけるお手伝いをするとよいのでは。

Q:絵本から文字の多い本に移る難しさに、どのように対処しているのか?
→ 文字ばかりの本に移る必要が本当にあるのか。「PBを読みたい」というなら必要かもしれないが、そうでなければレベル2~3の本までで十分。むしろ生徒がレベルを上げようと焦るのを抑えるくらいがよい。

Q:生徒に「達成に気づかせる」のはどうしたらよいか?
→ 声掛けした時、生徒が話したことに新鮮に反応する。また、以前読んだ同じ本を読むことを奨励している。間をあけて同じ本を読むと、本人が自分の進歩に気づく。

続いて、酒井理事長の講演です。
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「言葉は、読む、書く、話す、聞く、の4技能からなる」という通説はウソだと思う。4つに分かれているように見えて、実は1つの同じものが違うように見えているだけ。学校英語の害は大きい。学校英語を一生懸命やってきた人は、音、物語、言葉を楽しむ方になかなか移れない。

「英作文スピーキング」の特徴は、一語一語を頭の中で作文しながらしゃべること。殆どの英語の先生は、「英作文スピーキング」をしているのではないだろうか。(「英作文スピーキング」「英作文ライティング」について)

「一口大」で一息でポンと言える長さから始めてはどうか。「英作文スピーキング」は文が長くて、リズムがなく、するっと入ってこない。コミュニケーションの第一歩は笑顔や泣き顔。その次の段階が「一口大」がある。(「bite-size」「一口大」「一口サイズ」について)

一般的に、言葉は「文字」であり、白い紙の上に黒い活字で印刷したものと考えられている。しかし、言葉は「文字」ではなく「音」である。(「ことばの氷山」について)

絵が沢山ある本を多く楽しみ、絵(・画像・映像)が身体にたまっていく経験を多くすると、文字が多い本を読んでも心がそれらを補ってくれて、言葉が分かる。(「絵から」「絵本の魔法」について)

以上、NPO英語多読講座を通してみえてきた多読の持つ可能性や広がりについての話でした。

その後、全体の質疑応答を行いました。英語分科会には、大学、高校、中学、児童英語とさまざまな先生が参加していますが、いつも全体で質疑応答を行っています。お互いに新たな視点を持つきっかけになったり、垣根を越えて話題を共有することでみえてくるものを大切にしたいと思っているからです。今年も多くの意見交換がされました。

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Q:(公立校の英語教諭)多読しているが忙しくて中断してしまう。①多読を継続できる秘訣と②多読を中断して再開するとき、どこに戻っていけばいいのか?
→ 一年くらい中断していたことがあったが、絵本で復活できた。簡単なレベルに戻る方がよい。絵本と英語マンガとDVDで復活した。
→ 気にしないで好きなものを好きなだけ読むとよい。
→ 「習慣化」することがポイント。

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Q:(中学の英語教諭)夏休みの前後では子供が成長して変質していて、教室がうるさくなって、多読授業がつらくなった。どのように対処すればよいか?
→ 先生自身が本の内容を知ることが重要。
→ 中2男子が “Elephant and Piggie” シリーズを気に入っている。
ペアを作りお互いに読み聞かせをさせている。読み聞かせで、Jon Klassen の絵本に男の子が感激。「感想を書いてみよう」というと書く手が止まらないくらいだった。
→ 一人一人を見て、一人一人に対応していくしか方法がないとは思うが、生徒が20~30人いると実際難しい。

Q:(中高一貫校の非常勤英語教諭)学校の方針により、英語で授業を行う必要がある。「ネイティブのような英語を目指さなくてもいい」という考え方と、酒井先生の「『英作文スピーキング』を脱するためシャドーイング等でネイティブのリズムを獲得する」という考え方の、どちらをとればいいのか混乱している。
→ 英語の学園ものなど、「先生」が出てくるドラマや映画をたくさん見て、「先生はこういう風に話す」というのを身につけるのはどうか

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(今年も、なるべく多くの方に発言していただきたくというスタイルをとりました。なお、写真は、順不同です)

他にもたくさんの意見が交わされました。

今回のセミナーで印象深かったのは、ほとんどの話題で出てきた「ブックトークが大事」という言葉です。これは単に、感想文を書かせる、本の内容への理解確認というものではありません。むしろブックトークをしたくなるような本を紹介したり、お気に入りの1冊を一緒に探していくことが支援者として大事な支援だと思います。

毎年反省は尽きませんが、次回もまた気持ちを新たにパワーアップした英語分科会を開催したいと考えています。興味を持たれましたら、ぜひ来年の多読支援セミナーへお越しください。(大賀)