1月12日地域日本語支援者養成講座(岐阜県可児市)で「多読」講演をしました!

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1月12日(日)、岐阜県可児市国際交流協会主催「地域日本語支援者養成講座」で、多読についての講演とリライトワークショップを行いました。
会場は、可児市多文化共生センター フレビア。 市が建設し、NPO法人可児市国際交流協会が運営を任されているそうです。図書資料室や研修室があり、ここで、さまざまな日本語教室、母語教室、就業支援などが行われ、地域の外国人に利用されています。わずか人口10万人の新興都市ですが、人口の5-6%にあたる外国人のための施設を建ててしまうところが、すばらしい! 公設民営のモデルケースとして注目度も高いと聞いています。事務局長の各務さんによれば、新興都市だからこそできたことなのだそうですが。

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さて、朝10時、講座開始。
20名ほどの参加者を前に、「授業に多読をとりいれよう!」と題し、お話ししました。
「多読」について聞いたことがある方と、まったく初耳という方は五分五分。
「語彙や文法を覚えて積み重ねても、あまり効果がない。私たちの英文読解がそうだったように・・・」と言うと、みなさん、あちらこちらでうなづいてくださいました。
いつものように、「教えないほうがいい」「わからない言葉は飛ばしていい」という話になると、ちょっとびっくりした顔でこちらをじっと見つめていた方も。とにかく参加者の反応がよく、話がしやすいこと!
百聞は一見にしかず、で、私たちが昨年まで続けて来たボランティア多読クラスでの成果をなるべくたくさん動画で見ていただきました。
みなさん、興味をそそられた様子で、
「どうしてもこの単語の意味だけは辞書を引きたい、という学習者にはどう対応したらいいのか」
「読んで楽しんだら、読めたことにして次々に違う本を読むのか」
「従来の、語彙+文法の授業と多読を組み合わせることの効果は?」
質問もいくつかポンポンと出ました。

その後の、Oxford Reading Tree を使った、絵のない本から始める英語多読体験をしていただきました。わずか15分程度でしたが、「世界を読む」ということの意味、伝わったでしょうか。

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「climb」は、「登る」と答えてくださった方が、降りるシーンで、climb downとあるのを見てちょっとびっくり。では、climbの意味は・・・?こうした積み重ね、経験が言葉の習得には重要ということを感じるきっかけになったらいいなと思いました。

午後は「リライトワークショップ」

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4人ずつ5つの班に分かれて、レベル0のイソップの「アリとキリギリス」あるいは「北風と太陽」を作成。
よくしたもので、班にお一人は絵の上手な方がいらっしゃって、みんなで協力しながら、作品ができあがっていきます。
語彙表の語彙からときどきはみ出てしまう言葉遣いも混ざりましたが、絵の役割を十分理解した上でのお話作りは、出来も上々でした。
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ところで、部屋の後ろでは、この時間、フィリピンの方3名が、初めての多読に挑戦してくれました。ひらがなはなんとか読める、でも教科書しか読んだことはない、という方たちです。
最初は、ノートと鉛筆を抱え込み、一文一文写したり、ローマ字で読み方を書いたりしていましたが、「本の内容を楽しんで下さい。何も書かなくていいから」というと、鉛筆を置き、徐々に本の世界に浸るように。
聞き読みもしながら、多い人はレベル0から1まで10冊近く楽しんでいきました。2時間以上座って本を読んでいる姿は感動的でした。
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さて、ワークショップの方は次に「蜘蛛の糸」または「注文の多い料理店」の冒頭部分をリライトしてもらいました。班での共同作業にみなさん、とても熱心に取り組まれ、途中で止めづらかったのですが、4時を回ったところで終了、発表してもらいました。
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結局、朝10時からなんと4時半過ぎまでおつきあいいただきました。きっと相当お疲れになったでしょうが、あっというまの一日でもありました。

東京から遠く離れた岐阜県可児市のみなさんとこうして交流できたことは本当にありがたかったです。
これを読んで興味を持った地方の国際交流協会の方、ぜひ、こんな機会があったら呼んでください!!!
多文化のメッカ、東京都新宿区にいるくせに、実践も普及もままならない私たち・・・。ときどきくじけそうになりますが、参加者のみなさんの感想に励まされました。以下に紹介いたします。
参加者のみなさん、呼んでくださった可児市国際交流協会のみなさん、本当にありがとうございました。
(粟野)

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(アンケートより抜粋)

1.参加の動機をお聞かせください (地域日本語支援者養成講座全体への参加動機も含む)

D:フレビアの日本語教室で試行錯誤しているのでいろいろな日本語の学び方を知りたい。

E:外国人の児童生徒を学校で教えています。日常会話は上手なのに授業についていけない子どもに語彙をどう増やすかが、今の私のテーマです。読書が必要だと思い、多読のヒントになると思って参加しました。

G :実際教えて(2時間)見て、なかなかに難しいことが判ってきた。わかりやすい(理解しやすい)指導法があるならば習得したい。

I:日本語サポーターをやっているので多読はどんなものか知りたいと思いました。

2.本日の内容はいかがでしたか

A:大変わかりやすい内容でした。多読について理解できました。正しい方法でできるかどうかわかりませんが、やってみたいと思いました。

B:「多読」について初めて知って興味深く感じました。「教えない」ということにびっくりしました。しかしその分、ひとりひとりの性格や様子を把握するこ とがとても大切だと思いました。午後からのリライトのワークショップはレベルに合わせて表現や語彙を考えていくのがとても難しかったです。人によってでき あがった物が違っておもしろいと思いました。

C:多言語多読という言葉を初めて知りましたが、とても興味深く参加させていただきました。まず、自分が英語版を体験したことで、この多読のよさを実感することができました。作成する部分の大変さもありましたが・・・。

D:しっかりした教材があるのがよい。段階的に上級にすすめるので達成感が得られると思う。個人別にレベル対応ができる。等々良い参考になりました。(原文のまま)

E:「楽しくたくさん」多読の意義がよくわかりました。日本に長く住み会話はできるが読み書きができない人の支援に有効だということがわかりました。また、私のテーマの「語彙を増やす」ための支援にも取り入れようと思いました。ありがとうございました。

F:初めて聞くことばかりで、勉強になりました。おもしろかったです。個々にどこまでのレベルか考えるのかは難しいと思いました。今の教室にどう取り入れるか考えていきたいです。学習者が満足でき、教える方にとっても成長や変化が見られるのは嬉しいことだなあと思いました。

G:確かに16年間英語を学んできたが、英文本を読むことは現在ない。理解も難しい。英文で多読の効果をこれから実施してみたい。

H:楽しくリライトできました。多読(聞く、話す、書く)で自然に体に記憶できることに驚きです。

I:先生の話し方や内容がわかりやすかった。限られた語彙や表現を使って簡単に書きかえる作業は、難しかった。文章を読む時、わからない言葉をいちいち辞書を引かなくても飛ばせばいいということを知りました。

J:今、日本語教師の養成学校に通学しています。文法+語彙の教え方を学んでいますが、問題点があることがとても理解できました。教えないことが学習に役だつ考え方は、学習者の立場に立ったすばらしい考え方だと思いました。リライトは、とても難しく頭を使い疲れましたが、とても楽しかったです。

K:勉強になりました。多読について基本的なことを知り、少し経験できてよかったです。

L:多読と文法や会話中心の日本語教育とをうまく組み合わせながら、学習者のニーズに合わせた勉強ができるような環境ができたらと思いました。多読は、わかるという喜びが、さらなる学習意欲や生活と結びついた日本語の習得につながっていくと感じました。「教えない」ということの難しさを感じつつ、大切さもとてもよくわかりました。

M:とてもわかりやすく興味深い内容でした。ワークショップは難しく、考えるのが大変でしたが、とても良い経験になりました。

N:語句の意味をひとつひとつ説明することに時間を費やしていました。わからない言葉を飛ばしても、多読することで、体に言葉が染み込むことがとても重要ですね。

Q:多読という勉強方法は知っていたが、具体的な教室活動がイメージできなかったので今回理解できてよかったです。実際に英語の多読をしてみた時に絵だけで何を伝えたいのか考えることがとても大切だと実感することができました。自分の中では、今回読んだ3つのレベルのうち、レベル2が読みやすかったです。(絵と文章1文)

R:とても参考になった。良い方法だと思った。クラスの中で、一部分的にでも取り入れることができるのではないか。日本人が、日本語を学んできたような幼児期―幼児―子どもー小学生・・・プロセスを踏んでいけば外国人も自然に日本語を覚えていくことができるのだろうが、それには時間がかかりすぎる。クラスの中で、この方法を取り入れるのが具体的の様に思える。

S:まず、楽しかったです。少ない語彙で、限られた文法で文章を作るのは大変難しかったです。外国人の方が、熱心に本を読んでいたので、読むことができる喜びは、大きいと思います。

3.今後の自分にどのように役立てたいと思いますか?

B:難しい表現を易しい表現にすることが役だつと思いました。英語の多読体験もおもしろかったので、自分でも取り入れてみたいと思いました。既存の教え方だけではなく、いろいろな方法があるんだと知って、これからも幅広くアンテナを張っていようと思いました。

H:レベルの区別を自分がしっかりとおぼえないといけないかな。学習が楽しんで本を作ることができると感じました。一人一人を見ることが大切で見守ることが、大切かなあ。

J:語彙+文法にとらわれず、多読等含め様々なアプロ―チで学習者に何が適切なのかを自分なりに考えたいと思います。

K:本市の日本語講座等に活用できるか検討したいと思います。

L:図書館との連携方法等を考えながら、多読を取り入れた日本語教育について考えていきたいと思いました。

M:機会があれば多読を取り入れてみたいと思いました。その反面実施するには、私自身の勉強も必要だと思いました。

Q:現在、中学生に英語を教えているが、教科書や参考書では理解できていないときがあります。今回の多読の勉強法を知って、授業に少し取り入れてみたいです。また、自分が英語を学ぶとき、日本語を教えるときにも役立つと思います。

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